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札幌高等裁判所 昭和51年(ネ)94号 判決

控訴人

株式会社マルサン三田商会

右代表者

吉田秀康

外二名

右三名訴訟代理人

藤本昭夫

被控訴人

小宮山徳次

外二名

右三名訴訟代理人

播磨源二

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人らの平等負担とする。

事実《省略》

理由

一控訴人らの請求原因(一)の事実(本件山林の売買契約の締結、代金の支払、移転登記の経由、控訴人らの所有権の取得)は当事者間に争いない。

二ところで、控訴人らは、本件山林の売買においては、本件山林の面積が約八万坪と指示されかつ代金額もこの面積を基礎として定められたものであるから、いわゆる数量指示売買であると主張するので、まず、この点について検討する。

(一)  〈証拠〉を総合すると、次の各事実を認めることはできる。

1  被控訴人小宮山徳次は、専問学校卒業後東京都内で不動産業を営んでいたものであるが、昭和三五年頃から道南の開発を目論み、鹿部村に約五五万坪、七飯町に約一五万坪の山林・原野を買収し、本件山林もその事業の一環として、昭和三八年七月頃訴外滝沢速水から、その余の被控訴人二名と共同で買受けたものであるが、その後、買収した山林・原野を造成して別荘地等として分譲し、あるいは原状のまま他に転売したものの、本件山林のみが売れ残つてしまつた。ところが、被控訴人小宮山徳次はすでに年も老いたことなどの諸事情から道南の開発から手を引くことになつたので、本件山林を開発造成して別荘地として分譲することを断念したが、これを細分して分譲することも面倒であるところから、本件山林全部を一括して買つてくれる人があればこれを売却することにした。そこで、昭和四六年夏頃、被控訴人小宮山徳次は、函館市内で不動産業を営んでいる訴外山内義光に対し、本件山林全部を一括して即金で買う人がいれば売却したいから買主を探してこれを売却してほしい旨を依頼した。

2  そして、その後山内義光は、本件山林の買主を物色したが適当な買主も探すことができなかつたので、昭和四七年四月頃函館市内で秋林不動産という名で不動産業を営んでいる訴外工藤牛茶に対して、本件山林の売却に協力してくれるよう相談を持ちかけたところ、右工藤午茶もこれに応じ、本件山林の買主を探すことにした。そこで、工藤午茶は、その頃、昭和四四年頃から自己の事務所の隣りで木材の製造・販売、不動産の売買・管理業を営んでいる控訴人株式会社マルサン三田商会に対し、本件山林を買受けてはどうかと斡旋した。工藤午茶から本件山林の買受の斡旋を受けた控訴人株式会社マルサン三田商会の代表取締役である控訴人吉田秀康は、早速道南商事の訴外森山権太郎に対しこの話を持ちかけたところ、同人から、控訴人株式会社マルサン三田商会が自ら買受けてこれを開発・造成したうえ、別荘地として分譲したら相当な利益が挙がるから自らこれを買つてみたらどうかと奨められたので、本件山林を買うことにし、工藤午茶に対し本件山林を買つてもいいと申出るとともに、その斡旋に乗り出すよう依頼したので、その後、工藤午茶と山内義光は、協力して控訴人らと被控訴人らとの間の本件山林の売買契約締結への斡旋に乗り出すことにした。

3  昭和四七年七月中旬頃、山内義光と工藤午茶は、控訴人吉田秀康と控訴人株式会社マルサン三田商会の専務取締役をしていた訴外久保田実之らと連れだつて本件山林を検分したが、その際には、本件山林の中に踏み入ることをせず、横津岳の裾野の小高い所に登つて本件山林の現況とその範囲について、立つている所から北の方を見降し、前面に広がる雑木林を指差してこれが本件山林であると指示したうえ、その範囲は乙第三号証の一の図面(左下の方向が北である)で言つて、東西方向に走る黄色い点線のやや上の方にある横に細い農道附近が北側の境界、病院の建物附近にある道路附近が東側の境界、右図面の南北に走る黄色い点線とほぼ同じ地点に北から南へ延びる道路の延長が西側の境界であるが、南側の境界については特に目標がないからはつきりしないと指示説明し、面積は約八万坪である旨説明した。その後、工藤午茶は、鹿部村役場や法務局から本件山林附近のいわゆる公図を転写してきたうえ、これを本件山林の登記簿とともに控訴人吉田秀康に手渡した。同年七月下旬頃、山内義光と工藤午茶は、再び控訴人吉田秀康と久保田実之と連れだつて現地を検分したが、その際には、本件山林は後日宅地として造成したうえ、別荘地として分譲する関係上、本件山林の起伏状況を確認する必要があつたため、右関係者は、本件山林の北西の境界附近まで車で乗り入れたうえ、そこで車を降り、そこから東に延びて存在する農道を通つて東側の境界まで通り抜けして、起伏を調査したところ、宅地造成にとつて特に支障のある状況が見当らなかつたため、控訴人らは、本件山林を買取る意思を固めその旨を山内義光や工藤午茶に伝えた。ところで、本件山林の売り値については、山内義光と工藤午茶は、一坪当り金一五〇〇円、面積八万坪で総額金一億三五〇〇万ではどうかということであつたが、控訴人らが本件山林を買受けた後宅地造成して分譲した場合の利益を試算した結果、坪金一五〇〇円では少し高くなつて利益を挙げる自信がなかつたので、控訴人らは、山内義光と工藤午茶に対し坪金一四〇〇円で買受けたい旨申し入れたところ、山内義光らから、坪金一四〇〇円でよろしいとの返事があつたので、本件山林を一坪金一四〇〇円で買受けることにした。しかし、控訴人らは、自己資金が全くなかつたため、本件山林を買受けた後、これを担保に提供することを条件として、渡島信用金庫に対し、金一億五〇〇〇万円の融資の申込みをし、その頃、同金庫函館支店長から申込みどおり融資する旨の内諾を得た。

4  被控訴人小宮山徳次は、同年八月七日か八日頃来道して湯の川の桂旅館に滞在していたので、控訴人吉田秀康は、その頃久保田実之とともに桂旅館に赴き、被控訴人小宮山徳次、山内義光、工藤午茶らと面談した。本件山林が坪当り金一四〇〇円で売買することに決つていたことは前述のとおりであるが、本件山林の登記簿上面積二六万七一三〇平方メートル(八万〇八〇七坪)によつて売買代金を計算すると、総額金一億一二〇〇万円余となるので、右面談の席上、控訴人吉田秀康は、被控訴人小宮山徳次に対し、一億一〇〇〇万円で買取りたい旨申出たところ、被控訴人小宮山徳次は快よくこれを承諾したので、その場で、控訴人らと被控訴人らの間において本件山林を総額金一億一〇〇〇万円で売買する合意が成立した。また、その際、控訴人吉田秀康は、被控訴人小宮山徳次に対し、本件山林の範囲が不明確であるし、実測面積もどれ程あるか不明であるから、実測した上で取引したい旨申入れたが、被控訴人小宮山徳次から、自分はオリンピツク関係の外部団体の役員をしていて選手をミユンヘンに引率して行く関係上、実測したうえ取引するのでは間に合わないから、実測しないで取引し、しかも同月一一日の函館空港発東京行最終便までに取引を終えて現金を持ち帰りたいので、そのように取計つてほしい旨申込まれたので、控訴人吉田秀康もやむなくこれを了承した。しかし、その場では、売買契約書を作成せず、後日被控訴人小宮山徳次がこれを作成することにした。

5  そこで、控訴人吉田秀康は、渡島信用金庫に対し、本件山林の売買についての売主側との交渉の経過を説明するとともに、同月一一日の函館空港発東京行きの最終便までに取引を終えて売主が東京に現金を持つて帰りたいとの意向であるので、その時間に間に合うように、本件山林の買主である控訴人ら三名共同名義で融資をお願いしたい旨申入れたところ、函館支店から、同月一一日午後理事長が森町の本店から函館支店に赴き関係書類を閲読したうえで最終的な融資の決裁をする旨の連絡があつたので、被控訴人小宮山徳次に対しても、同日午後函館支店で本件山林の売買取引をしたい旨連絡した。他方、被控訴人小宮山徳次としても、同月一一日の取引が円滑に執り行なえるようにとの配慮から、事前に渡島信用金庫函館支店に赴き、同支店長と面談したうえ、同支店長に対し、本件山林の権利書、売主三名の印鑑証明書と委任状を見せるとともに、同支店長との間で、控訴人らから受取る本件山林の売買代金一億一〇〇〇万円の中、金五〇〇〇万円程度は函館支店の預金として残す旨をも約した。同月一一日午後一時頃、控訴人吉田秀康、被控訴人小宮山徳次は、山内義光、工藤午茶、久保田実之らとともに函館支店に集り、本件山林の売買取引をすることになつたが、同日午後五時すぎ頃になつてようやく、控訴人ら三名は、前記金庫から融資を受けることができたので、その際、被控訴人小宮山徳次は、あらかじめ起案し売主名下に署名・押印して持参した不動産売買契約書(乙第一号証)の草稿を控訴人吉田秀康に示して記名・押印を求めたところ、控訴人吉田秀康がこれを閲読したうえ、その内容を了承して、買主名下に「函館市新川町十一番十二号 株式会社三田商会 代表取締役吉田秀康」のゴム印と代表取締役印を捺印して、本件不動産売買契約書(三枚綴りのもの)が作成され(売買契約書の作成、その作成の日時・場所については当事者間に争いない。)、被控訴人小宮山徳次は、控訴人吉田秀康から代金一億一〇〇〇万円を受領するとともに権利書、印鑑証明書、委任状を同控訴人に手渡して予定どおり本件売買契約の締結・履行を滞りなく終え、被控訴人小宮山徳次は、売買代金の中約六〇〇〇万円を携えて函館空港発東京行の最終便で帰京した。

6  ところで、右不動産売買契約書には、売買物件として、「茅部郡鹿部村字鹿部弐五壱番壱 一、山林 弐壱〇七〇四m2  茅部郡鹿部村字鹿部弐五九番壱 一、山林 五六四弐六m2」、その代金として、「金参千六百萬円」と記載されているほか、第八条の特記事項には、「本売買物件は公簿地積の商取引に付、実測量地積に増減あるも当事者売主買主は苦情等言及せざることとす」という記載があり(右不動産契約書に右の記載があることは当事者間に争いがない。)、右土地面積は登記簿上面積によつたものである。

(二)  控訴人らは、被控訴人小宮山徳次から、本件不動産売買契約書は、他の共有者に見せるだけの仮契約書だと言われたので、その内容を十分吟味しないまま記名・押印してしまつたものであり、また、時間的余裕がなく、右不動産売買契約書に目を通さなかつたため、特に第八条の特記事項などは記載されているとは全く気付かないままに記名・押印した旨主張し、〈証拠〉中には右主張に沿う供述があるが、前記認定の事実によれば、被控訴人小宮山徳次は、昭和四七年八月一一日当日函館空港発東京行きの最終便までに取引を終え東京に現金を持ち帰りたいとの意向をもつていたため、関係者らは契約書作成、代金及び登記関係書類の授受を急いだものとは認められるが、本件売買において作成された不動産売買契約書は僅か三枚綴りのもので、その条項も僅か八個条にすぎず、控訴人吉田秀康が本件不動産売買契約書全部に目を通す時間もない程であつたとは認め難く、また控訴人吉田秀康は、不動産取引業を営む控訴人株式会社マルサン三田商会の代表取締役であつて、不動産取引の専門家であるから、当然、売買契約に際して作成される契約書の意義ないし重要性については十分な知識を持つていたものと認められるのみならず、本件山林の取引は金一億一〇〇〇万円を一度に現金で決済するという大きな取引であるから、その代金額の決定・支払、本件山林の形状、面積等については慎重を期し、特別な神経を使つていたものと推認されることのほか、〈証拠〉に照らすと、前記供述は、これをたやすく措信し難い。他に控訴人らの右主張を認めるに足りる確証はない。もつとも、本件山林の売買代金は金一億一〇〇〇万円であるのにかかわらず、本件不動産契約書には、売買代金として、「金参千六百萬円」と記載されていることは当事者間に争いないが、〈証拠〉によれば、被控訴人小宮山徳次から脱税のため売買代金を税務署に怪しまれない金額である金三六〇〇万円まで減額して売買したことにしてほしい旨依頼され控訴人吉田秀康がこれを応諾したことによつて、本件売買契約書中の売買代金が「三千六百萬円」と記載されたものと推認しうるから、右事実から直ちに本件売買契約書が単なる見せ契約書であつたとか、控訴人吉田秀康が、これに記名捺印の際、契約本文全部に目を通さなかつたものと即断することはできない。また、〈証拠〉中には、前記桂旅館での面談の翌々日頃即ち昭和四七年八月九日か一〇日頃、被控訴人小宮山徳次が控訴人株式会社マルサン三田商会の事務所を訪ねて来て更に面談を重ねた際に、控訴人吉田秀康は被控訴人小宮山徳次に対し、「後日実測の結果、公簿面積と実測面積との間に二〇〇〇坪以内の増減があつても、互に代金の増減額を請求しないが、もしそれを超えるような場合には一坪一四〇〇円の割合で清算することにしたいと申出たところ、被控訴人小宮山徳次はこれを承諾した。」旨の供述があるが、同月一一日に作成された前掲乙第一号証の本件売買契約書の第八条の特記事項には、実測面積に増減あるも売主買主共苦情を言わない旨の特約が明記されていることは前認定のとおりであり、この事実と〈証拠〉に照らすと、右〈証拠〉もたやすく信用することはできない。

前記(一)の1ないし6の認定に反する〈証拠〉は、いずれも、にわかに措信することができず、ほかに、前記(一)の1ないし6の認定を覆えすに足りる証拠はない。

(三)  ところで、民法五六五条にいういわゆる数量指示売買とは、売買契約の当事者において目的物が実際に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度を売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するものと解するのが相当であるところ(最高裁判所第三小法廷昭和四三年八月二〇日判決民集二二巻九号一六九二頁参照)、これを本件についてみるに、前記認定の事実によれば、本件売買契約においては、売買の目的土地として、登記簿に記載してある字地番地目および地積が表示され、その合計地積二六万七一三〇平方メートル(八万〇八〇七坪)は本件売買契約の当事者が実際に存在すると考えていた約八万坪に近似するものであるといい得るが、被控訴人側は、本件売買契約当時目的物件の実測面積を正確に把握していたとは認められず(もつとも〈証拠〉によれば、被控訴人小宮山徳次は、昭和三八年夏頃吉村淳二測量士に依頼して本件山林の面積の調査をさせたところ、公図上の面積が登記簿上の面積より約一万坪少ないという結果が出たこと、右の調査は実際に本件山林を測量したものでなくして、函館地方法務局南茅部出張所備付の公図にスケールをあてて図面上の面積を算出したものであつたことが認められ、これによれば被控訴人側において本件土地の実測面積が、その登記簿上面積よりもかなり少ないのではないかと疑つていたものと推認されるのであるが、右事実によるも、被控訴人側が、実測面積がいか程かを正確に把握していたものとは認め難い。)、目的物件の面積が登記簿の記載どおり実存することを確言し、そのことを表わす趣旨において売買契約書に登記簿どおりの地積を表示したものとは考え難く、他方、買主である控訴人側においても、買受の目的が宅地造成にあつたとはいえ、売買契約を締結するまでに目的物件の実測面積と登記簿上の面積との差異に特段の配慮をして、あらかじめ売主側から交付を受けていた公図にスケールをあてておおよその面積を確認するなどの措置をとつた形跡はなく、売買契約書の調印に際して、実測面積の表示を記載することを要求せず、かえつて、実測面積の増減があつても異議を申し述べない旨の特約条項を明記した本件契約書に何らの異議を留めずに調印していることなどの諸事情をあわせ考えれば、本件山林の売買契約は、売買目的物件の地積が登記簿の記載どおり実存することを前提として締結されたものとは認め難い。もつとも、前認定の事実によれば、控訴人側も被控訴人らから売却の依頼を受けた工藤午茶や山内義光も売買代金を決定するに際し、一坪当りの単価としての金一五〇〇円ないし金一四〇〇円と登記簿に記載されている地積に近似する八万坪を基礎として希望価格を算出したことが認められるが、右の坪数による計算は、代金額決定のための一応の方法にすぎず、売買の当事者としては、目的物件の登記簿の地番、地目、地積による表示と現地での指示によつて特定された鹿部村所在の本件二筆の土地の全体を別荘分譲地に適する土地としてのその特性に着目して売買したものと認めるを相当とし、当事者において、売買物件の実際に有する面積を確保するために登記簿の地積を表示し、かつ、この地積を基礎として代金額が定められたものとは断定することはできない。

なお、前判示のとおり、被控訴人側において、本件山林の実測面積がその登記簿上面積よりもかなり少ないのではないかと疑つていたに拘らず、被控訴人側が本件売買契約締結のための折衝過程において代金額の決定のための一応の方法としてその登記簿上面積に拠つたことは、買主たる控訴人側に対し多少フエアでない嫌があることは否定できないが、しかし被控訴人小宮山徳次としては、右の点に疑念があつたからこそ本件売買契約書の第八条にわざわざ前記のような特約を設けたものと推認され、控訴人側としても、右特約を承諾したものと認むべきこと前判示のとおりである以上、法律上は、もはや被控訴人側の右の点の非を責めることはできないものといわざるを得ず、被控訴人側に右のような非があるからといつて本件売買契約を数量指示売買となし得ないことはいうまでもない。

してみると、本件山林の売買は、民法五六五条にいういわゆる数量指示売買にあたると認めることはできないものであるから、本件山林の売買がいわゆる数量指示売買であることを前提とする控訴人らの本件減額請求の主張は、その前提を欠くことになるので、その余の点について判断するまでもなく理由がなく、採用することができない。

三次に、控訴人らは、本件売買がいわゆる数量指示売買に該らないとしても、本件売買契約には、「公簿面積によつて代金を算出するが、将来買主側で実測した結果、実測面積と公簿面積との差が六六〇〇平方メートル以内にとどまるときは、売主、買主ともに差額請求をせず、もしも右の差が六六〇〇平方メートルを超えるときは代金額の増減請求し得る。」との特約があつたと主張するので判断する。

〈証拠〉中には、右主張に添う供述があるが、右各供述は、〈証拠〉に照してたやすく信用し難いものであることは前判示のとおりであり、他に控訴人らの右主張を肯認し得るに足る証拠はない。

してみると、本件売買契約に控訴人ら主張のごとき特約があつたものということができないから 右のごとき特約の存在することを前提とする控訴人らの本件減額請求の主張も、その前提を欠くことになるので、その余の点について判断するまでもなく、理由がなく、採用することができない。

四以上判示したとおり、本件山林の売買は、いわゆる数量指示売買とは解することができず、また本件売買契約には控訴人ら主張の特約があつたものとは認めることができないから、本件山林の売買がいわゆる数量指示売買であることあるいは右の特約があつたことを前提として、被控訴人らに対し、売買代金減額の意思表示をしたうえすでに支払つた売買代金の一部の返還を求めるという控訴人らの本訴請求はいずれも、失当であつて排斥を免れないものといわざるを得ない。

五よつて、控訴人らの本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件各控訴は理由がないから、民訴法三八四条に則り本件各控訴を棄却することとし、控訴費用の負担について、同法九五条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(宮崎富哉 塩崎勤 村田達生)

目録〈省略〉

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